創業融資を検討するとき、「一体いくら申し込めばよいのだろう」
「借りられるだけ多く借りた方が安心なのだろうか」と迷う方は少なくありません。
借入額は、「なんとなく500万円」「借りられる上限まで」といった感覚で決めるものではありません。
まず、事業を始めて軌道に乗せるまでに必要な資金を計算します。
そのうえで、開業後の資金繰りから、無理なく返済できる金額かどうかを確認します。
この記事では、創業融資の借入希望額を計算する基本的な手順を、具体例とともに解説します。
目次
借入額を決める基本の計算式
借入希望額を考える基本式は、次のとおりです。
=借入希望額の目安
親族からの借入や出資など、その他の調達資金がない場合は、次のように考えます。
=借入希望額の目安
ただし、この計算で出た金額を、そのまま融資申請額にするわけではありません。
最後に、その金額を借りた場合の毎月の返済額を試算し、
売上が計画を下回った場合でも資金が不足しないかを確認します。
ステップ1.開業に必要な設備資金を集計する
最初に、事業を始めるために必要な設備資金や初期費用を洗い出します。
たとえば、次のような費用です。
- 店舗・事務所の保証金、敷金、礼金
- 内装工事費、設備工事費
- 機械、厨房設備、パソコン、備品の購入費
- 車両やシステムの導入費
設備資金は、できる限り見積書や料金表をもとに集計します。
概算だけで計画すると、工事の追加や備品の買い忘れによって、
開業前に資金が不足する可能性があります。
一方で、必要以上に設備をそろえると、借入額と返済負担が大きくなります。
「開業時に必ず必要なもの」と「売上が安定してから購入できるもの」に分けて考えましょう。
なお、ホームページ制作費や広告費などは、内容や制度によって
資金区分の扱いが異なる場合があります。
ステップ2.運転資金を計算する
設備資金だけで借入額を決めると、開業後の資金繰りが苦しくなることがあります。
事業を始めても、すぐに計画どおりの売上が入るとは限りません。
また、売上が発生してから入金までに時間がかかる業種もあります。
その間にも、家賃、人件費、仕入れ、外注費、水道光熱費、
通信費、広告費などの支払いは発生します。
必要な運転資金は、次の考え方で計算します。
たとえば、開業後3か月間の資金収支が次のようになるとします。
| 月 | 売上入金 | 現金支出 | 累計収支 |
|---|---|---|---|
| 1か月目 | 30万円 | 100万円 | ▲70万円 |
| 2か月目 | 60万円 | 100万円 | ▲110万円 |
| 3か月目 | 90万円 | 100万円 | ▲120万円 |
この場合、資金不足の最大額は120万円です。
さらに、売上の入金遅れや予定外の支出に備えて、安全余裕額を加えます。
たとえば、安全余裕額を次のように見積もったとします。
- 売上の入金遅れに備える資金:40万円
- 仕入価格の上昇や追加仕入れに備える資金:25万円
- 設備の修繕や備品の交換に備える資金:15万円
安全余裕額の合計は80万円です。
したがって、必要な運転資金は200万円となります。
安全余裕額は、「何となく80万円」と決めるのではなく、
売上の入金が遅れた場合の支出や、追加仕入れ、修繕費などを項目ごとに見積もり、
金額の根拠を持たせることが大切です。
ステップ3.事業に使える自己資金を確認する
必要資金を計算したら、自己資金をいくら事業へ投入できるかを確認します。
ここで注意したいのは、
預金残高の全額が、事業に使える自己資金ではない
ということです。
開業後には、自分や家族の生活費も必要です。
病気や家電の故障など、事業以外の突発的な支出も考えられます。
家計上、事業に使える自己資金は次のように計算します。
=事業に使える自己資金
たとえば、手元の預金が400万円あり、生活予備費として100万円を残す場合、
事業に使える自己資金は300万円です。
なお、金融機関の審査で自己資金としてどのように評価されるかは、
資金の出所や準備の経緯によって異なります。
ステップ4.借入希望額を計算する
カフェの開業を例に計算してみます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 店舗契約・内装工事・厨房設備など | 600万円 |
| 開業後の運転資金 | 300万円 |
| 必要資金合計 | 900万円 |
| 事業に使える自己資金 | 300万円 |
借入希望額の目安は、次のとおりです。
この600万円は、必要資金から逆算した借入額です。
次に、600万円を借りた場合の返済額を確認します。
ステップ5.返済後の資金繰りを確認する
600万円を、返済期間7年、金利年2.0%、元利均等返済で借りると仮定した場合、
毎月の返済額は約7万7,000円です。
制度や審査内容によって異なります。
毎月の返済額が分かったら、返済後にいくら現金が残るかを確認します。
たとえば、通常の月間資金繰りが次のような計画だったとします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売上入金 | 200万円 |
| 仕入れなどの変動支出 | 80万円 |
| 家賃・人件費などの固定支出 | 100万円 |
| 税金などの積立 | 5万円 |
| 返済前に残る現金 | 15万円 |
| 毎月の返済額 | 約7万7,000円 |
| 返済後に残る現金 | 約7万3,000円 |
通常計画では返済できますが、これだけで安全とは判断できません。
売上が10%下がった場合も確認します。
| 項目 | 通常計画 | 売上10%減少時 |
|---|---|---|
| 売上入金 | 200万円 | 180万円 |
| 変動支出 | 80万円 | 72万円 |
| 固定支出 | 100万円 | 100万円 |
| 税金などの積立 | 5万円 | 5万円 |
| 返済前に残る現金 | 15万円 | 3万円 |
| 毎月の返済額 | 約7万7,000円 | 約7万7,000円 |
| 返済後に残る現金 | 約7万3,000円 | ▲約4万7,000円 |
売上が10%下がると、毎月約4万7,000円の資金不足が発生します。
この場合、600万円が必要資金として妥当でも、返済に余裕がある計画とはいえません。
設備費を見直す、固定費を抑える、自己資金を増やす、
運転資金を厚めにするなど、事業計画全体の調整が必要です。
単純に借入額だけを減らすと、開業後の運転資金が不足する可能性があるため注意しましょう。
借りすぎ・借りなさすぎの両方に注意する
借入額が多すぎると、毎月の返済負担や支払利息が増えます。
売上が少し下がっただけで、資金繰りを圧迫する可能性もあります。
一方で、「借金は少ない方がよい」と借入額を抑えすぎると、
売上が安定する前に運転資金が不足することがあります。
開業後に資金が不足してから追加融資を申し込んでも、
希望どおりに借りられるとは限りません。
借入額は、多ければ安心、少なければ安全というものではありません。
必要な資金を確保しながら、売上が計画を下回った場合でも
事業を継続できる金額に調整することが大切です。
まとめ
創業融資の借入額は、次の順番で考えます。
- 開業に必要な設備資金を見積書などから集計する
- 月ごとの入金と支払いから、必要な運転資金を計算する
- 生活費などを除いた自己資金を差し引く
- 毎月の返済額を試算する
- 売上が下がった場合も、返済後に資金が残るか確認する
基本となる計算式は、次のとおりです。
=借入希望額の目安
ただし、計算上必要な金額と、無理なく返済できる金額が一致するとは限りません。
両者に差がある場合は、借入額だけでなく、設備投資、固定費、
開業時期、売上計画などを含めて見直す必要があります。
創業融資サポートの内容や料金、ご相談の流れについては、
以下のページで詳しくご案内しています。
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