「年末調整の書類、そろそろ配らないといけないのかな」
秋も深まってくると、そんなことが気になり始める経営者の方もいるのではないでしょうか。
特に、従業員を雇い始めて初めての年末を迎える会社では、「何から手をつければいいのか」「どの書類を集めればいいのか」と迷うこともあるかもしれません。
年末調整は12月に行うのが一般的ですが、必要な書類の配布や回収は、それより前から進めておく必要があります。また、令和8年分は税制改正による変更にも注意が必要です。
今回は、創業期の会社が年末調整を進めるうえで、確認しておきたいことを時期ごとに整理します。
1.年末調整は「会社が行う所得税の精算」
年末調整は、会社が毎月の給与から源泉徴収してきた所得税と、1年間の給与や各種控除をもとに計算した年税額との差額を精算する手続きです。
毎月の給与から差し引かれる所得税は、その月の給与額などをもとに計算されています。一方、年間の税額は、1年間の給与総額や各種控除を反映して計算するため、差が生じることがあります。
源泉徴収した税額が多ければ従業員へ還付し、不足していれば追加で徴収します。この計算には、従業員から提出してもらう申告書や控除証明書が必要です。
なお、法人の場合、社長や役員が受け取る役員報酬も税務上は給与にあたるため、社長ご自身も原則として年末調整の対象になります。 従業員の分だけでなく、社長ご自身の書類も忘れずに準備しておきましょう。
2.まずは「扶養控除等申告書」の提出状況を確認する
年末調整の対象となるのは、原則として「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を勤務先に提出している人です。
この申告書は、通常、その年最初の給与の支払を受ける日の前日までに提出してもらいます。提出されていない間は、毎月の源泉徴収を原則として「乙欄」で計算することになります。
一方、他の勤務先が主な給与の支払先となっている人などは、その会社では年末調整の対象にならないのが原則です。
従業員が少ない会社でも、パート・アルバイトを含め、一人ひとりの状況を確認することが大切です。まずは、年末調整の対象となる従業員全員の提出状況を確認しましょう。
3.10月〜11月:必要な書類を配布する
書類の回収と内容確認には時間がかかります。提出期限を決め、余裕を持って従業員に案内しましょう。
申告書の配布・回収は紙でも行えますが、給与計算ソフトなどを使って電子的に進める方法もあります。自社の方法に合わせて準備しましょう。
主に確認・配布する書類は次のとおりです。
- 令和8年分の扶養控除等(異動)申告書
- 基礎控除申告書・配偶者控除等申告書・特定親族特別控除申告書・所得金額調整控除申告書の兼用様式
- 保険料控除申告書
- 住宅借入金等特別控除申告書等(該当者のみ)
- 令和9年分の扶養控除等(異動)申告書
令和8年分の扶養控除等申告書は、すでに提出されていれば変更や漏れがないかを確認します。令和9年分は、翌年の給与計算に向けて準備する書類です。
また、生命保険料や地震保険料の控除証明書は、秋頃から届き始めます。捨てずに保管し、申告書とあわせて提出してもらうよう伝えておきましょう。
住宅ローン控除は、原則として初年度に確定申告が必要で、給与所得者は2年目以降、年末調整で控除を受けられます。
4.11月:集めた書類を確認する
申告書が集まったら、受け取ったものから内容を確認していきます。
- 氏名や扶養親族などの必要事項に記載漏れがないか
- 配偶者や扶養親族の所得の見積額が記載されているか
- 保険料控除の申告内容と控除証明書が合っているか
- 必要な証明書がそろっているか
年の途中で入社した従業員がいる場合は、前職の源泉徴収票も確認が必要です。年末調整で前職の給与を合算する場合、前職の源泉徴収票がないと会社で年末調整を行えません。
前職の源泉徴収票の再発行には時間がかかることもあるため、中途入社の方には早めに声をかけておきましょう。
また、申告書の不備が見つかった場合には、従業員に確認し、必要な修正をお願いすることになります。11月中の回収・確認をひとつの目安にしておくと、12月の精算を進めやすくなります。
5.12月〜翌年1月:税額の精算と提出手続き
書類がそろったら、1年間の給与と源泉徴収税額を集計し、年末調整を行います。一般的には、その年最後に支払う給与や賞与で過不足を精算します。
給与計算ソフトを使う場合も、申告書の内容が正しく反映されているか確認しましょう。
年末調整後には、次の手続きがあります。
- 従業員へ源泉徴収票を交付する
- 従業員の住所地の市区町村へ給与支払報告書を提出する
- 必要に応じて、税務署へ法定調書と法定調書合計表を提出する
令和9年1月からは、市区町村へ給与支払報告書を提出した場合、給与所得の源泉徴収票を税務署にも提出したものとみなされます。ただし、従業員本人への交付は引き続き必要です。
令和8年分の源泉徴収票の交付や給与支払報告書の提出期限は、令和9年2月1日(月)です。
源泉所得税の納期限は、毎月納付の場合は令和9年1月12日(火)、納期の特例を受けている場合は同年1月20日(水)です。年末年始を挟むため、提出・納付までの予定を確認しておきましょう。
6.令和8年分の主な改正点
令和8年分の年末調整では、税制改正により、主に次の点が変更されています。
- 基礎控除の引上げ
- 給与所得控除の最低保障額の引上げ
- 扶養親族等の所得要件の見直し
- 23歳未満の扶養親族がいる場合の生命保険料控除の特例
- 年末調整関係書類の様式変更
これらの改正は、原則として令和8年12月の年末調整から反映されます。前年と同じ取扱いで進めず、申告内容や給与計算ソフトが今年の制度に対応しているか確認しておきましょう。
まとめ|早めの準備で、年末調整をスムーズに
年末調整は、12月になってから始めるのではなく、早めの書類配布と回収が大切です。従業員の人数が少ない会社でも、確認漏れや証明書の不足があると、予定どおりに計算を進められないことがあります。
まずは扶養控除等申告書の提出状況を確認し、11月中を目安に必要書類をそろえましょう。あわせて、年末調整後の納付・提出期限も予定に入れておくと安心です。
かさまつ会計事務所では、年末調整や給与に関するご相談を承っています。
「初めての年末調整で、何から準備すればよいか分からない」「今年の税制改正にどう対応すればよいか不安」という方も、ぜひお問い合わせください。
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