個人事業主として事業を続けていると、
「売上が伸びてきた」
「税金の負担が気になってきた」
「取引先から法人化を勧められた」
そんな変化を感じるタイミングがあります。
そしてその頃から、
「そろそろ法人化した方がいいのだろうか?」
というご相談をいただくことが増えてきます。
法人化は、単に会社を作る手続きではありません。事業が次のステージへ進むための大きな転換点です。
一方で、
「税金はどれくらい変わるの?」
「法人化するベストなタイミングは?」
「設立後にどんな手続きが必要なの?」
といった疑問を抱えたまま進めてしまうと、本来受けられるメリットを十分に活かせないこともあります。
大切なのは、会社を作ることそのものではなく、自分の事業に合ったタイミングで法人化を進めることです。
この記事では、個人事業主から法人へステップアップする際に押さえておきたい判断基準と、スムーズに法人成りを進めるための4つのステップをご紹介します。
法人化を考え始めるのはどんなタイミング?
私たちがお客様からご相談をいただく中で、法人化を検討し始めるきっかけはさまざまです。
・売上や利益が伸びてきた
・税金の負担が大きくなってきた
・従業員を雇う予定がある
・融資を活用して事業を拡大したい
・取引先との関係で法人化を求められている
こうした状況は、事業が順調に成長している証拠でもあります。
ただし、「周りが法人化しているから」「税金が安くなると聞いたから」という理由だけで進めてしまうのはおすすめできません。
法人化には、
・節税につながる可能性がある
・信用力が高まる
・融資や採用面で有利になる
といったメリットがある一方で、
・社会保険への加入
・経理や税務手続きの増加
・法人住民税などの固定的な負担
といった変化もあります。
そのため、まずは自分の事業にとって本当に法人化のメリットがあるのかを確認することが大切です。
目次
ステップ1:まずは「法人化のタイミング」を見極める
法人化の相談で最も多いのが、
「売上は伸びているけれど、本当に今法人化した方がいいのかわからない」
というお悩みです。
法人化には様々なメリットがありますが、タイミングを見極めるための代表的な目安があります。
① 利益が800万円前後になってきた
個人事業主の所得税は累進課税制度のため、所得が増えるほど税率も高くなります。
一方で法人は税率構造が異なるため、利益水準によっては法人化によるメリットが出やすくなります。
そのため、課税所得が800万円前後になってきた場合は、法人化を検討する一つの目安になります。
② 売上が1,000万円を超えてきた
消費税の取り扱いも、法人化を検討する重要なポイントです。
個人事業主が売上1,000万円を超えると、一定期間後に消費税の課税事業者となります。
また、現在はインボイス制度の影響により、売上規模だけでなく、取引先との関係や登録状況によっても消費税の負担が変わります。
法人化のタイミングによっては、消費税の取り扱いに影響する場合もあるため、事前のシミュレーションが重要です。
※現在はインボイス制度により、売上1,000万円未満でも、インボイス発行事業者として登録している場合は消費税の課税事業者となります。
③ 今後の事業計画も重要な判断材料
数字だけでなく、
・従業員を採用する予定がある
・融資を活用したい
・事業を拡大したい
といった今後の事業計画も大切な判断材料です。
法人化は税金だけの話ではありません。
事業の成長戦略の一つとして考えることが重要です。
ステップ2:個人と法人のお金・資産を整理する
会社を設立した後は、個人事業で使っていたお金や資産をどのように引き継ぐかを整理します。
ここで大切なのは、「個人」と「法人」は別の存在であるという考え方です。
自分が設立した会社であっても、法律上は別人格として扱われます。
①在庫や備品の引き継ぎ
パソコンやデスク、車両、商品在庫などを会社で使用する場合は、どのように引き継ぐのか整理しておきましょう。
状況によっては契約書の作成や適正な評価が必要になることもあります。
②法人口座を開設する
法人設立後は法人口座を開設し、事業のお金の流れを明確に分けることが大切です。
事業に関する収入や支出は法人口座で管理し、個人の生活費とは区別していきます。
この区別が曖昧になると、後々の経理や税務処理が複雑になってしまいます。
③役員報酬は生活費にも関わる大切なポイント
法人化すると、会社のお金を自由に生活費として使うことはできません。
そのため、経営者自身の給与となる「役員報酬」を設定し、その範囲内で生活費をまかなうことになります。
役員報酬は、一度決めると原則として事業年度の途中で自由に変更することができません。
高すぎると会社にお金が残らず、低すぎると生活費が不足してしまうため、法人の利益や今後の資金繰り、ご家族の生活費なども踏まえて慎重に決めることが大切です。
法人化のご相談では、「いくらに設定するのがよいですか?」というご質問をいただくことも多くありますが、個別にお話をする中でアドバイスさせていただいております。
ステップ3:契約や名義変更を進める
法人化後は、これまで個人名義で契約していたものを法人名義へ切り替えていきます。
意外と見落としが多い部分ですが、スムーズな事業運営のためには欠かせない作業です。
①取引先への連絡
入金口座の変更や契約の締結し直しが必要になる場合があります。
直前に伝えると取引先にも負担がかかるため、早めに案内しておくと安心です。
②名義変更のチェックリスト
・クレジットカード
・ETCカード
・スマートフォン
・インターネット回線
・事務所の賃貸借契約
・会計ソフトなどの各種サービス
設立後に慌てないよう、事前にリストアップしておくことをおすすめします。
ステップ4:個人事業の廃業手続きを行う
会社設立が終わったら、最後に個人事業主としての手続きを整理します。
①廃業届の提出
個人事業を終了する場合は、税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。
②個人の確定申告も忘れずに
法人化した年であっても、
法人設立日までの個人事業の所得については、翌年に個人として確定申告を行います。
法人化したから個人の申告がなくなるわけではないため、注意が必要です。
まとめ
法人化は、事業が成長しているからこそ検討する大切なステップです。
その一方で、タイミングや準備によって受けられるメリットが大きく変わることもあります。
法人化で失敗しないためには、
・タイミングを見極める
・設立前に準備する
・個人と法人のお金を分ける
・廃業手続きを忘れない
この4つを押さえておくことが大切です。
法人化は、会社を設立して終わりではありません。
設立後の資金繰りや会計体制づくり、融資への対応など、本当のスタートはその後にあります。
だからこそ私たちは、「会社を作ること」だけではなく、「会社を育てていくこと」まで見据えたサポートを大切にしています。
かさまつ会計事務所では、法人化のタイミングのご相談から、設立後の会計・税務サポートまで一貫してお手伝いしています。
「自分の場合は法人化した方がいいのだろうか?」
そんな段階でも構いません。お気軽にご相談ください。
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