「税務署から、税務調査の連絡が来た」
突然そんな連絡を受けたら、どうしても身構えてしまうのではないでしょうか。
特に、創業してまだ数年という経営者の方にとっては、
「税務調査って、何をされるんだろう」
「何か間違っていたのだろうか」
「どこか指摘されたらどうしよう」
と、不安になるのも無理はありません。
ただ、税務調査の連絡が来たからといって、すぐに何か問題があると決まったわけではありません。
この段階でまず意識したいのは、焦って帳簿を直したり、手当たり次第に資料を集めたりする前に、状況を整理することです。
今回は、税務調査の連絡を受けたときに、最初に確認・対応しておきたいことを、初めての方にも分かりやすく解説します。
1.まずは「何の調査なのか」を確認する
税務調査の事前通知は、必ずしも会社へ直接連絡が入るとは限りません。
顧問税理士が提出している税務代理権限証書において、調査の事前通知を税務代理人へ行うことについて納税者の同意が示されている場合などは、税理士側に事前通知が行われるのが一般的です。
一方、会社へ直接連絡があった場合には、電話口ですべてを理解しようとせず、まずは聞いた内容をメモしておけば十分です。
たとえば、次のような点です。
- どこの税務署からの連絡か
- 対象となる税目(法人税、消費税、源泉所得税など)
- 対象となる課税期間・事業年度
- 調査開始日時
- 調査場所
- 調査担当者の所属部門・氏名
まずは、「何について、いつの期間を確認する調査なのか」を把握しておきます。
また、提示された調査日時が都合の悪い日であれば、その場で予定を確定させなくても構いません。
顧問税理士がいる場合には、税理士の立会い日程も確認する必要があります。
「税理士にも確認してからお返事します」と伝え、必要に応じて日程を調整していきましょう。
一方で、税理士へ先に連絡が入った場合には、税理士から会社へ調査内容や今後の流れについて共有されます。
いずれの場合でも、税務調査の連絡を受けたその場ですべてを自分だけで判断する必要はありません。
まずは必要な情報を整理し、その後は税理士と相談しながら進めていきましょう。
2.顧問税理士と連携して、調査の準備を進める
税務調査の事前通知があったら、顧問税理士と調査内容を共有しながら準備を進めていきます。
税理士に先に連絡が入った場合には、税理士から会社へ、対象となる税目や期間、調査予定日などを共有します。
反対に、会社へ直接連絡が入った場合には、税務署から聞いた内容をメモして、
「税務署からこのような連絡がありました」
と、そのまま顧問税理士へ伝えていただければ十分です。
税理士は、状況に応じて、
- 税務署との日程調整
- 必要となる資料の確認
- 過去の申告内容の確認
- 調査で論点となりそうな取引の整理
- 税務調査当日の立会い
などを行います。
税務調査の準備というと、「領収書や帳簿をそろえること」をイメージされるかもしれません。
もちろん資料の準備も必要ですが、それだけでは足りません。
過去にどのような申告をしているのか、どのような取引があったのかを、税理士側でもあらためて確認する時間が必要です。
会社へ直接連絡が入った場合には、担当税理士への共有が早いほど事前確認にも余裕が生まれ、落ち着いて準備を進めやすくなります。
3.必要な帳簿や資料を整理する
調査対象となる期間が分かったら、その期間に関する帳簿や資料を確認していきます。
一般的には、たとえば次のような資料が確認対象となることがあります。
- 総勘定元帳
- 請求書・領収書
- 預金通帳・入出金明細
- 契約書
- 給与関係の資料
- 固定資産に関する資料
- 売上や仕入の内容が分かる資料
ただし、会社にある資料を手当たり次第にすべて出せばよい、ということではありません。
必要となる資料は、会社の業種や取引内容、調査対象となる税目などによって変わります。
また、最近では請求書や領収書、銀行明細などを電子データで保存している会社も多くなっています。
紙のファイルだけでなく、クラウド会計やネットバンキング、オンラインストレージなども含め、必要な資料を確認できる状態になっているかを見ておきましょう。
何を準備すればよいか分からない場合は、税理士と一緒に必要なものを整理しながら進めていくと安心です。
4.「少し気になっていること」があれば、先に税理士へ伝える
税務調査前の準備で、資料をそろえることと同じくらい重要なのが、過去の処理で少し気になっていることを確認しておくことです。
たとえば、
- 決算前後の売上について、いつ売上にしたか
- 外注先への支払いをどのように処理しているか
- 役員や家族との間で行った取引
- 飲食代や車両費など、事業とプライベートの区分
- 高額なパソコンや機械、車などを購入したときの処理
- 現金で行った取引
などです。
ここで意識したいのは、「税務署にどう答えれば指摘されないか」を考えることではありません。
その取引について、
「いつ」
「誰と」
「何のために」
「どのような取引をしたのか」
という事実関係を確認し、それを裏付ける資料があるかを整理しておきます。
創業して間もない時期には、
「当時はよく分からないまま、この処理にしてしまった」
ということが出てくる場合もあります。
だからこそ、気になることがあれば税理士にも隠さず、事前に共有してください。
内容をあらかじめ把握できていれば、税理士も申告内容や資料を確認しながら、どのように対応するのが適切かを一緒に考えることができます。
5.連絡が来てから、焦って帳簿を書き換えない
税務調査の連絡を受けると、
「今のうちに、何か直しておいた方がいいのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、焦って事実と異なる内容に帳簿を書き換えたり、実際には存在しなかった資料を後から作ったりすることは避けるべきです。
たとえば、
- 事実と異なる内容に帳簿を書き換える
- 存在しなかった請求書や領収書を作成する
- 事実と違う説明を周囲と示し合わせる
といった行為です。
一方で、事前に確認している中で、本当に申告や経理処理の間違いに気づくこともあります。
間違いに気づいたことと、それを隠すために帳簿を変えることは、まったく別の話です。
誤りが見つかった場合は、自分で判断して直すのではなく、まず税理士へ相談しましょう。
修正申告が必要なのか、どのタイミングでどのように対応するのが適切なのかを確認したうえで進めるのが安心です。
また、
「税務調査の連絡が来たから、今のうちに修正申告をしておけば大丈夫」
と考えるのも注意が必要です。
税務調査の通知を受ける前に、自主的に誤りに気づいて修正申告した場合と、調査の通知を受けた後に修正申告した場合とでは、加算税の取扱いが異なることがあります。
つまり、調査の通知を受けてから慌てて修正申告をしても、すべてリセットできるわけではありません。
誤りに気づいたときこそ、自己判断で急いで動くのではなく、まず税理士へ相談し、状況に応じた対応を確認していきましょう。
6.税務調査は、申告内容を確認するための手続きです
税務調査の連絡が来ると、
「真面目に申告してきたつもりなのに、どうしてうちに?」
と思う方もいるでしょう。
ですが、税務調査の対象になったという事実だけで、脱税や不正を疑われていると考える必要はありません。
税務署では、申告内容や各種の資料情報などをもとに調査対象を選定しています。
そして税務調査では、帳簿や資料を確認したり、取引について質問したりしながら、これまでの申告内容が適正だったかを確認していきます。
初めて税務調査を受ける方にとっては、「何を聞かれるのか分からない」ということ自体が不安につながりやすいものです。
だからこそ、必要以上に怖がるよりも、
聞かれたことについて、事実と資料をもとに説明できるよう準備しておく
という考え方で臨むとよいでしょう。
その場で正確に答えられないことについては、曖昧な記憶のまま答えるのではなく、事実関係や資料を確認してから回答することも重要です。
税理士が立ち会っている場合には、確認が必要な点を相談しながら対応していくことができます。
まとめ|税務調査の連絡が来ても、まずは一つずつ整理を
初めて税務調査の連絡を受ければ、不安になるのは自然なことです。
ただ、連絡を受けた直後から慌てて何かを始めるよりも、まずは状況を一つずつ整理していきましょう。
確認しておきたいのは、
- 何の税目についての調査なのか
- どの期間が対象なのか
- いつ、どこで行われるのか
- どのような資料が必要になりそうか
- 過去の処理で確認しておきたいことはないか
といった点です。
税務調査への対応で大切なのは、「何も指摘されないように取り繕うこと」ではなく、これまでの取引や申告内容を整理し、事実に基づいて説明できるよう準備することです。
かさまつ会計事務所では、顧問契約をいただいているお客様の税務調査について、事前準備や税務署とのやり取り、当日の立会いまでサポートしています。
また、顧問税理士を変更して間もない時期に税務調査が入った場合など、調査対象期間の申告を前任の税理士が担当しているケースでは、これまでの経緯や関与状況を確認しながら対応します。
必要に応じて前任の税理士とも連絡を取り、ケースに応じて調整しながら、お客様にとって適切な対応方法を整理して進めていきます。
創業して間もない会社では、
「そもそも税務調査がどんなものか分からない」
「税務署から連絡が来たけれど、まず何をすればいいのか分からない」
というところからのご相談でも大丈夫です。
一つずつ状況を整理しながら、一緒に対応していきます。
次回は、「税務調査で慌てないために、普段から整えておきたいこと」について解説します。
税務調査が来てから特別な対策をするのではなく、普段の経理をきちんと整えておくことが、結果として一番の備えになります。
創業期の会社だからこそ、今のうちから整えておきたいポイントを具体的にご紹介します。
コメント
COMMENT